店舗付き物件の価値はどこで決まるのか

住宅やマンションは、類似の物件が売りに出されているので、概ね売れ具合の想像がつきますが、店舗付き物件の場合、比較するものが少ないので、いつ売れるのかの予測が困難です。売り出したものの、なかなか売却できないとしたら、物件の価値評価を見誤っているかもしれません。この記事では、店舗付き物件の価値がどこで決まるのかについて解説します。

店舗付き物件とは

店舗付き物件には、いろいろなパターンが存在します。本体の建物と店舗の関係によって、次のように分類できます。

店舗付き住宅

店舗付き住宅は、一般的な2階建て、3階建ての住宅の1階部分を店舗としているタイプです。上階の住宅に住む人が自ら店舗を営んでいるケースと、住人がオーナーとなって他人に店舗を貸し出しているケースがあります。

売却の際は、一棟全部が売りに出されるのが一般的です。

店舗付きマンション

店舗付きマンションは、低層階部分を店舗として上階をマンションとしているタイプです。賃貸マンションでオーナーがすべて所有している場合は、一棟すべて売却します。

店舗とマンションがそれぞれ区分所有になっているケースは、各部屋、各店舗ごとに売りに出されます。

貸しビル

貸しビルは、オーナーがビルを所有しているタイプの建物です。各部屋を店舗や事務所として貸し出します。売却の際は、一棟すべて売りに出されます。

高く売れる店舗付き物件とは

店舗付き物件を購入するのは、自ら店舗経営をしたいと考えている人か、賃貸収入を見込んだ投資家です。このため、高く売れる物件は、集客が見込める条件が揃っていることが大きなポイントになります。

また自ら店舗経営に携わる人は、運営上の観点から、店舗部分以外のバックヤードにも興味を示します。

具体的にどのような物件が高く売却できるのかみていきましょう。

駐車場が敷地内にある

車での来店が見込める店舗だと、敷地内に何台か車が停められる駐車場があるのは、大きな評価ポイントになります。来客ばかりでなく、物品の仕入れなどにも活用できますから、駐車場のある物件は高い価格での売却が見込めます。

店舗と住居の動線が分離されている

自らが店舗経営を行う場合であっても、住居部分と店舗部分の動線が完全に分離している方が、店舗としては成功します。ひと昔前であれば、店の子どもやその友達が店舗から出入りするのが当たり前でしたが、現在は、そのような形態の店は敬遠されます。

客は店に「夢」を買いにきているという側面がありますから、あまり「日常」を持ち込まない方がいいのです。

また将来何らかの事情で店舗経営が困難になった際も、他人に賃貸しができるというメリットがあります。

店舗にトイレや水回りがある

特に飲食店を経営する店舗は、営業許可を得るのにトイレは必須です。また厨房関係の水回りがあれば、設備投資が最小限に収まるので、購入希望者の関心を集めることになります。

士業や不動産の事務所として活用する場合でも、来客者のためのトイレを備えておくのは、最低限のサービスです。

間口が広い

たとえ同じ店舗の面積でも、間口が広いものと奥行きが長いものを比較すると、間口が広い店舗の方が人気があります。間口が広い店舗の方が、通行人の目を引きやすいので、集客が見込めるからです。

反対に間口が狭い店舗は、いくら奥行きが長く店舗面積が確保できたとしても、購入希望者の関心をあまり引きません。

道路との高低差がない

店舗と前面道路に高低差があって、いくらかの階段を使用して入店するタイプだと、購入を躊躇う人がいます。

道路との高低差がなく、バリアフリーで入店できる店舗の方が人気が高くなります。さらに角地で二方向に出入口を設けられる店舗だと、評価が高くなります。

すべての店舗が営業している物件

店舗付きマンションで、区分所有しているタイプの店舗の場合、売りに出されている当該店舗以外は、すべて現役で営業を行っている状態の物件だと高く売れる可能性があります。

反対に、ほとんどの店舗が常にシャッターが閉まっている状態だと、なかなか購入希望者は現れません。

物件周辺にごみが散乱していない

物件の周囲にごみが散乱していたり、汚れが目立ったりする物件は、好んで購入する人はなかなか現れません。

また貸しビルを1棟すべて売り出す場合、多くの購入希望者は投資用のローンを利用します。融資の相談を受けた銀行員は、ローンの返済が見込める物件であるかを事前に現地調査することがあります。その際に、あまりにごみが散乱している状況だと、収益の見込みのない物件として、ローンの実施をしてくれないこともあります。

売却を検討するのであれば、常日頃の清掃や管理を欠かさないことです。

店舗付き物件の査定はどんな要因で決まるのか

不動産評価は、建物の建設費用から導き出す「原価法」、周辺の取引事例と比較して導き出す「取引事例比較法」、テナントの家賃収入から導き出す「収益還元法」があります。

原価法は、本来マンションの家賃を決めるための算定法ですから、店舗には馴染みません。また取引事例比較法も、周囲に比較できる類似店舗がないことが多いために適していません。このため店舗などの収益物件は、収益力に着目した収益還元法によって不動産評価額を出す方法が、最も適切です。

仮に貸店舗にしたとして、その際に見込める家賃収入を元に算出する方法ですが、家賃設定が高いということは、つまり店の営業利益が高いということになります。

それではどのような物件が、高い家賃収入が見込めると評価されるのでしょうか。

地域による要因

店舗付き物件の場合の評価は、立地の属性に大きく左右されます。国土交通省「不動産鑑定評価基準~運用上の留意事項」では商業地域を分類して評価をランク付けしています。

ここでは都心の商業地が高く評価されていますが、地域性以外に対象の街区にどれだけ商業施設が集積しているかが重要なポイントになります。たとえば商店や飲食店が連担している街区と事務所が中心となっている街区では、前者の方が高い査定になります。

さらには購買層の分析も重視されています。購入価格帯の高い客層が流れてくるエリアであれば、不動産の評価は高くなります。

容積率も関係がある

指定容積率によっても、物件の評価が異なってきます。当然高い指定容積率に立地している方が査定が高くなりますが、いくら高い容積率の地域であっても、前面道路が狭いと厳しい容積率制限になるので注意が必要です。

商業地域の場合は、道路幅員に10分の6を乗じた値とされています。たとえば前面道路が幅員4mの狭い道だとすると、「4m(前面道路の幅員)×6/10=2.4」の計算から 240%が指定容積率になるので、物件の評価も大きく引き下げられることになります。

前面道路が広すぎるのも注意

前面道路が広い方が評価が高くなるのは当然ですが、対面の街区の方が評価が高い場合、あまりにも前面道路が広いと、対面の客を呼び込めないとして、別のエリアとして判断されることがあります。

駅へのアクセス

最寄り駅のアクセスの良さや徒歩での時間も評価の大きなポイントです。特に大都市においては、駅の構内にたどり着くまでの時間ではなく、実際に電車に乗り込むことができるまでの時間がポイントになります。

さらに、その駅への評価も、中心商業地へのアクセス時間によって評価の高低が生じます。

買取専門の会社による買取も検討

店舗付き物件の売却が、思惑どおりの価格で売却できないと感じたら、買取専門の不動産会社に売却をするという方法があります。店舗付き物件は、個性的なプランであることから、なかなか売却先を見つけられないことがあります。

買取専門の会社は、収益ビル、区分店舗、事務所物件などの事業系不動産も買い取ってくれます。物件の密かに秘めた魅力を引き出してくれるので、意外と高値で買い取ってくれることがあります。

物件の査定がいくら高くても、買主がいなければ事実上価値はゼロ円です。事業系不動産物件の売却で悩んだら、明確にいくらで買い取ると表明してくれる買取専門の会社に、ぜひ相談してみてください。

まとめ

店舗付き物件の評価は、立地条件や店内へのスムーズなアプローチなどで決まります。また店舗周辺の清潔感も欠かせない要因です。細かなことですが、売却を考える際は、周辺の清掃も心がけておきましょう。

それでもなかなか買主がみつからないとなれば、一度買取専門の会社を訪ねてみてはいかかでしょうか。あなたの物件に価値を見出し、思わぬ高値で買い取ってくれるかもしれません。