住宅ローンが返せない!
任意売却でどう切り抜けるのか

せっかく購入したマイホームで、住宅ローンの返済がどうしても困難になった場合、どうすればいいのでしょうか。そのひとつの解決方法が「任意売却」です。でも任意売却をしたからといって、住宅ローンが必ず返せる保証はありません。住宅ローンが返せないといったいどうなるのでしょうか。

この記事では、住宅ローンが返済できないとき任意売却でどう切り抜けるのかを明らかにしたうえで、住宅ローンの返済は、その後どうなるのかについて解説します。

住宅ローンが返済できないとき任意売却でどう切り抜けるのか

住宅ローンの返済が困難になった場合、それを打開する方法のひとつに「任意売却」があります。任意売却は、世間に公然となる競売とは違い、ほとんど一般の売買と同じ様な流れで進められます。任意売却は、いったいどんなもので、どのように進めていくのかを解説していきましょう。

競売とは

まず住宅ローンの返却が困難になった場合に一般的に銀行が進めていく「競売」について簡単に説明します。

競売は裁判所が行う手続きですから、売却物件の存在は広く周知されます。そのため近所の人にも、住宅ローンの返済に窮していることを知られることになります。しかも競売の落札価格は、市場価格よりもかなり安くなるのが一般的です。

任意売却とは

これらの欠点を補うのが任意売却です。任意売却は裁判所の手続は一切関わりなく、表面的には一般の売買と同じように進められます。つまり不動産会社の情報ネットワークであるレインズに登録したうえで、広告を出して買主を探します。

このため市場価格と同様の価格で物件が売却できる可能性が高く、かつ近所の人にも住宅ローンの返済に窮していた事実を知られることはありません。

任意売却までの流れ

住宅ローンの返済が滞った場合、銀行から何度か電話で催促があり、やがて文書で返済が求められるようになります。さらに2カ月も経過すれば督促状が郵送されてきます。

この段階で銀行は競売を視野に入れています。銀行がいったん競売手続きに入ると、基本的に後戻りはできません。そのため、そこに至るまでに銀行に任意売却の同意を得ないといけないのです。ただし銀行としては、積極的に任意売却をしたいわけではないので、拒否されることもあります。

任意売却は特殊な手法方法なので、専門家の力を借りた方がスムーズにス進められます。住宅ローンの返済が困難だと判断したら、急いで任意売却を専門に取り扱う不動産会社に相談した方がいいでしょう。

任意売却専門の不動産会社に依頼れば、銀行との交渉は全面的に頼ることができます。任意売却に必要な事前調査をしっかりと行ったうえで銀行と協議を進めるので、任意売却に同意する方向に流れが変わることになります。

銀行が同意した場合、任意売却は、次のような流れで進行します。

  1. 相談先の選定……任意売却専門の不動産会社に依頼します。
  2. 現状確認……税金の滞納があれば差し押さえの対象になるので調査をします。もし滞納があれば、最優先で納めます。また他にも債務者がいないかの確認をします。住宅ローンの連帯保証人に関する調査も必要です。
  3. 不動産の査定……売却の見込み額を査定します。
  4. 不動産会社と媒介契約を締結
  5. 債権者または抵当権者及び保証人との交渉……関係者全員から同意を得る必要があります。
  6. 任意売却の開始……一般の売却方法と同じです。
  7. 購入者の選定
  8. 債権者の同意……売却額について債権者全員が同意しないと売却できません。あまりにも売却額が低いと拒否されることがあります。
  9. 任意売却契約の締結
  10. 引越し
  11. 任意売却契約の完了と精算

清算の前に家を空にした状態にして引越しをします。

リースバックだと引き続き住める

買主が任意売却の買取を専門としている会社や投資家であれば、買主と賃貸契約を結ぶリースバックという方法で、元の家に住み続けることができます。

任意売却後の残債に返済義務はあるのか

任意売却をしても、必ず住宅ローンが完済できるという保証はありません。任意売却で精算をしても、残債があれば支払いの義務があります。しかも基本的には一括返済を求められることになります。それには理由があります。

住宅ローンを順調に返済している間は「期限の利益」という権利により分割返済ができていたのですが、滞納により「期限の利益」が喪失するため、一括返済が必須となるのです。

住宅ローンの返済先は、その後どうなるのか

任意売却をしたものの、売却金額が住宅ローンの残額よりも少なかった場合は、依然として借金が残ります。この残債の返済はどうすればいいのでしょうか。

交渉によっては、そのまま同じ銀行に返済していくこともありますが、これは残債が少なく返済の見込みがある場合に限られます。

多額の残債だと、銀行はサービサーと呼ばれる民間の債権回収会社に債権を譲渡します。このため、返済先がサービサーに変わります。

住宅支援機構は別の方法になる

フラット35の住宅支援機構の場合は、債権をサービサーに譲渡しませんので、返済先も変更はありません。交渉することで、残債を減額してくれることはありませんが、返済期限の延長はかなり長い期間まで認めてくれることがあります。

一般的に5千円~3万円程度の返済で認められますが、返済が長期にわたるため、それだけ利子が膨らむことになります。したがって返済に際しては、どこかの時点で繰り上げ返済するというスタンスでいた方がいいでしょう。

銀行からサービサーに譲渡した債権はどうなる

銀行が返済困難と判断したものは、サービサーに債権を譲渡します。そうなると、返済の交渉相手はサービサーです。

ここでのポイントは、銀行は債権をかなり割り引いて譲渡しているということです。あくまでたとえ話ですが、2千万円の債権を2百万円で譲渡しているかもしれません。銀行としては、まったく返済がゼロで完結するよりは、幾ばくかの現金が入ってくれば良しとする傾向があります。不良債権を長期間抱えている方がむしろ損失だという発想です。

サービサーは、実際の額面より安く購入しているので、分割返済を続けて何年か経過した後に、任意の金額を一括返済したいと申し出をすると、たとえその額が全額返済以下の金額であっても、購入額よりも高い金額で一括返済をするのであれば、債権の解消に同意してくれる可能性があります。

サービサーとしては、利益を生むために債権を購入するのですから、一定の利益があれば、支障がないと考えます。

ここで重要なのは、交渉で決まったら、きちんと約束を守って実行することです。サービサーでも返済が滞るようであれば、差し押さえされることがありますから、現実的に返済できる金額で交渉をしましょう。

任意売却後に自己破産したらどうなるのか

任意売却後にいろいろと奮闘したものの、やはり自己破産以外に選択肢がなかったとしたらどうなるのでしょうか。

自己破産をすれば、たしかに残債は免責となります。しかし連帯保証人がいる場合は連帯保証人に残債の返済義務が移ることになるのです。せっかく信用して連帯保証人になってくれたのですから、迷惑がかからないように注意が必要です。

また自己破産をしても税金は免責されません。最終的には、確実に差し押さえられることになります。

また自己破産で返済が不可となれば、信用機関に記録が残ります。自己破産の場合、一部の信用機関では10年間登録しているところもあります。これにより、10年間はローンが組めないばかりか、クレジットカードも作れません。少しでも早く再起をはかり、再び住宅ローンで住居購入を考えているのであれば、なるべく自己破産は避けるべきでしょう。

まとめ

収入の予定が大きく変動して、住宅ローンの返済が危うくなったときの不安はとても大きいものです。しかし、落ち着いて対処することで、最悪の事態を免れることは可能です。

特に住宅ローンの返済が滞った際には、任意売却によって持ち家を処分する方法はとても有効だといえるでしょう。

売却先に困った物件は、買取専門の不動産会社が買い取ってくれることがあります。任意売却をしても売却の見込みがない物件も、一度相談をしてみてはいかがでしょうか。